吉祥菓寮ときな粉の物語

 
江戸時代中期の菓子茶房がルーツ
初代北川源左衛門が京都市西京区にある桂離宮横に菓子茶房を構えたのは江戸時代中期のこと。それから13代のち、1934年に北川徳次郎が「桂華堂」を創業、このとき、煎り大豆を初めて「節分豆」として商品化します。産地によって異なる豆の特徴を最大限生かすことへのこだわり、表皮を破らずに旨味を閉じ込めるための低温熟成や水打ちなど、豆のおいしさを引き出す独自製法の節分豆は高く評価されて一般家庭にも広く普及。屋号を改めた現在に至るまで、節分豆を名立たる神社仏閣に納めさせていただいております。この煎り大豆のように、シンプルでありながら素材のおいしさを引き出すお菓子を作るという精神は、時を越えて、私たちへと受け継がれ続けているのです。
吉祥菓寮の前身「桂華堂」 当時は豆菓子をはじめとした和菓子を製造・販売していました。
大豆の魅力をリブランディング 「きな粉」を日本から世界へ
2006年、私たちは大切に受け継いできた「大豆」の魅力を今一度見直し、煎り大豆を挽いて作る「きな粉」にスポットを当てることにしました。このきな粉の持つポテンシャルを日本国内で最大限に引き上げ、さらに世界へ広げていきたいという大きなビジョンは2015年にその第一歩を踏み出し、京都市東山区に「吉祥菓寮 祇園本店」が誕生。店舗では「深み焙煎きな粉」をはじめ、きな粉を中心としたスイーツを幅広く展開。 大豆のみならず、生乳や抹茶などの原材料も生産地を巡って厳選したものを使用し、「素材そのものが持つ力を最大限に活かし、本当のおいしさを伝える」ことを第一に、吉祥菓寮は未来に向けたスイーツ作りに挑戦し続けています。
「吉祥菓寮 祇園本店」 知恩院近くにある京町家をリノベーションした趣あるこの店舗から全国へ、物販店やカフェ併設店を展開しています。
宮廷人から庶民にまで愛される、
「きな粉」の今昔物語

「きな粉」が人々の間で大きく広まったのは室町時代。それまでは大豆を挽いて作ることから、ただ「豆の粉」と呼ばれていたものが宮中に仕える女房たちによって「黄金色の粉=黄な粉(きなこ)」という雅な風情ある名で呼ばれるようになったことで、より親しまれ広まっていったと言われています。

一般家庭においても大豆はさまざまな料理に使用されており、きな粉も庭先や畑で栽培した大豆から作られる食品のひとつでした。しかしながら、このように古くから日本人に親しまれる食品でありながら、これまでその素材や特性についてクローズアップされる機会はほとんどありませんでした。現代においては原材料が大豆であるということをご存知ない方もおられるのが実状です。

探し求めて出会った、最高の大豆
○大豆へのこだわり
・遺伝子組み換えではない、国産大豆のみ使用
・可能なかぎり「1等大粒」を推奨
・多種多様な大豆の「きな粉化」への挑戦

通常、大豆のなかでも大粒なものは煮豆などの料理に、小粒なものは主に加工品用とするのがほとんどです。そしてきな粉に使用する大豆は産地に関わらず極小粒が使われます。吉祥菓寮では旨みの豊富な大粒大豆を厳選し、大粒大豆の豊かな旨みをしっかりと味わえるきな粉を目指しました。

粒の大きさだけではなく、日本全国で生産される大豆は、生産地の気候や風土によって見た目も味わいもさまざまです。私たちも大豆本来の味に違いがあることは理解していましたが、それを焙煎し「きな粉」になったとき、どれほどの違いを生みだすかについては計り知れませんでした。それは大豆という素材にとって未知の領域だったといえます。

吉祥菓寮が厳選した
「きな粉」に最適な大豆(一例)
ミヤギシロメ
国産大豆の中でも高級品といわれる宮城県の大豆です。香ばしい風味と強い香りが特徴です。
茶大豆
一般的には流通の少ない希少な大豆です。さっぱりとした後味で、香り・旨味などのバランスが良いのが特徴です。
秘伝豆
東北地方にある、ごく一部の地域でしか作られていない大豆です。なめらかな舌触りが特徴です。
光黒
表皮の光沢が美しい黒大豆です。アントシアニンなどの栄養成分が豊富で、強い甘味が特徴です。
「深煎り」を可能にする
大粒大豆を厳選
○製法へのこだわり
・大豆の品種による個性や特徴を生かした焙煎時間の調整と丁寧な焙煎

先に述べたように、吉祥菓寮では旨みの豊富な大粒大豆を厳選しています。大粒大豆は小粒大豆と異なり長時間焙煎しても焦げないため深く煎ることができ、さらには大粒大豆のもつ贅沢な旨みもしっかりと味わえます。つまり、きな粉をより香ばしく豊かな風味に仕立て上げる「深煎り」は、大粒の良質大豆を使うことで実現できるのです。

また、大豆は品種によってその味わいにも個性があります。それぞれの大豆の美味しさを最大限に引き出せる焙煎時間を算出し、大豆の個性を尊重したきな粉を作っていることも吉祥菓寮の特徴です。現在では直営店舗にて常時6種類の大豆から生まれたきな粉を販売いたしております。

「鮮度の高いきな粉」をお届けするために

きな粉は日の経過とともに酸化・劣化がはじまり、風味も徐々に失われていきます。他の食品と同じく、きな粉も大豆本来の旨味を味わうには鮮度がとても重要なのです。吉祥菓寮では焙煎で生まれた鮮やかな黄金色と鮮度の良い状態を保つため、販売用パッケージに光を遮断する容器を採用。きな粉の風味と色味を最高の状態でお届けできるよう密封し、鮮度が保てるよう工夫しています。

こうして誕生した「深み焙煎きな粉」は、各店舗でお買い求めいただけます。また店内ではミヤギシロメ大豆を使用した深み焙煎きな粉を卓上にご用意。心ゆくまで、パフェやデザートへの“追いきな粉”をお楽しみください。

粉末でありながら瑞々しさすら感じる「深み焙煎きな粉」の世界をぜひ体験してみてください。

ご自宅で楽しめる、
こだわりきな粉スイーツ

「きな粉」はそれ自体がメインになることも、他の素材を引き立てることができるのも魅力です。

○焦がしきな粉パフェ(店内)

吉祥菓寮の代名詞ともいえるスイーツです。幾層にも重なる素材と食感のバリエーションをきな粉とともに味わい、最後まで飽きさせない工夫が盛り込まれています。パティシエのアイディアと技術がたっぷりと詰まった、魅力的なラインナップをご用意いたしております。

○本わらび餅(店内/土産)

吉祥菓寮の「本わらび餅」は、希少な本わらび粉を使用した贅沢仕立て。しっかりとした弾力がありながら、口に入れるとその温度ですっと溶けていくなめらかさが最大の特徴です。とろける食感と香り立つきな粉の世界をよりシンプルに、より深く体験いただけます。

○きなの宮サンド(土産)

特製のきな粉板チョコをサンドしたクッキーです。きな粉の香ばしさとチョコレートのコク、穀物入りクッキーのザクザク食感が贅沢な味わいです。

○きな粉を味わうプリン(土産)

きな粉プリンはシンプルにきな粉と牛乳と卵を感じていただけるようにお砂糖は最小限に控えて配合、オーブンでじっくり焼き上げました。その上にきな粉と相性の良い黒蜜のジュレ、ホワイトチョコレートでコクをプラスしたきな粉生クリームを重ね、さらに別添えの深み焙煎きな粉ミヤギシロメを添えました。ご家庭でも“追いきな粉”を体験できるスイーツです。

*お取り扱いカフェメニューの詳細については各店のページを、物販商品については店舗までお問い合わせください。
「きな粉の魅力」を発信するイベントを開催

吉祥菓寮では既存店舗を使ってイベントを企画・実施しております。現在では「きな粉セミナー」を開催。大豆についてのお話や、品種による味の違いを体験できる「きな粉のテイスティング」、きな粉を使ったレシピの紹介などを少人数制で実施しております。またナイトイベントでは限定パフェとアルコールを提供し、普段とは違った雰囲気でパフェをお楽しみいただくなど、吉祥菓寮とお客さまをつなぐ体験型イベントを通して、これからもきな粉の魅力を広く発信してまいります。