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素材の旅

vol.01 大納言小豆・小麦 〜 北海道道南・十勝編 〜

北海道が育む豊かな自然は良き材料の宝庫

Dounan&Tokachi region

文=北川聡-㈱京都吉祥庵 代表取締役-
Text by Satoshi Kitagawa
写真=菅原秀志
Photos by Shuji Sugawara

北海道は日本の国土の約22%を占める、ご存知のとおり日本で一番大きな都道府県だ。
道内では農業が盛んで、じゃがいもの生産量は日本国内の約80%を占め、たまねぎ約60%、小麦は約50%と日本の農業生産を支える一大生産地だ。
そこでは私たちのお菓子作りに欠かせない小豆や大豆ももちろん作られているのだが、
とにかく広い北海道、それぞれに合った気候や風土が存在していることは意外と知られていない。
今回は美味しさの訳を知る為に、それぞれの生産地を訪れてみました。

北海道農業の発祥の地「道南」

北海道の中でも温暖な気候は
大粒豆類を育てる環境に適している

北海道の小豆の一大生産地といえば、やはり思い浮かべるのは、「十勝」ではないだろうか? しかし、大納言小豆は道南地方でよいものが取れるということは、あまり知られていない。

そもそも大納言小豆とは、小豆の中でも特に大粒な特定品種を指し、煮た時に破れにくい特性をもち、いわゆる「腹切れ」が生じにくいことから、切腹の習慣のない「大納言」と名づけたといわれています。

私たちは餡や甘納豆としてお菓子に使うのですが、品質のよい大納言は艶があって、豆本来の味が際立っているものです。私どもが見つけたこの道南産の大納言小豆はまさにその逸品である。

道南とは、函館周辺の地区で、農業の歴史は古く北海道農業の発祥の地として、明治開拓期以降先進的な役割を果たして、地域の特徴を活かした農業生産を展開してきた地域だ。

北海道の中でも温暖な気候は<br>
大粒豆類を育てる環境に適している
大納言小豆の畑は、全体的に綺麗な緑色。厚沢部の大納言は良質の小豆として有名である。
(左)右から2番目が茎澤さん、一番左が北川代表。 (右)意外に知られていないが、小豆は黄色い花を咲かせる。
(左)右から2番目が茎澤さん、一番左が北川代表。 (右)意外に知られていないが、小豆は黄色い花を咲かせる。
畑は常に菌や虫との闘い。靴カバーは必ず実施するのがマナー。
畑は常に菌や虫との闘い。靴カバーは必ず実施するのがマナー。

この浜中町農協は、若手酪農家の研修専用の牧場も保有しており、日本中から浜中で勉強し、酪農家になりたいという方が絶えないそうだ。今では空き待ちが出るほどだとか。

採用基準は、「妻帯者であること」「40歳以下」「やる気がある人」だという。大自然の中で働けるとはいえ、作業は重労働。良いときも、大変なときも夫婦で乗り越えていかないと。作業を拝見していると納得だ。

365日休むわけにいかない酪農。今では町ぐるみで助け合って交代で休みを取る制度なんかもあって、この町は本当に酪農一色といった雰囲気だった。

日々細菌と闘っている私としても、牛舎でどの程度気を使われているのかは気になるところだったが、慣れた手つきで1頭づつ丁寧に衛生処理を施し、素早く搾乳される風景は、徹底された管理が行き届いている証拠。

広大な牧場で放牧される牛と、徹底管理された牛舎。これぞ目指していた牛乳の故郷だ。

(左)まだ収穫前なので、少し小さめではあるが、小豆の色合いはすでに綺麗にでている。<br>
(中)大納言のさやの中には7〜10粒程度小豆が入っている。(右)この程度までかれてくると収穫可能に。
(左)まだ収穫前なので、少し小さめではあるが、小豆の色合いはすでに綺麗にでている。
(中)大納言のさやの中には7〜10粒程度小豆が入っている。(右)この程度までかれてくると収穫可能に。

北海道の一大生産拠点「十勝」

十勝の大豆畑。大豆は黄色い葉っぱが特徴的。
十勝の大豆畑。大豆は黄色い葉っぱが特徴的。
一番右がフィールドマンの宮崎さん<br>
畑の状況や、どうすれば健康に生育するかを詳しく説明してくれた。
一番右がフィールドマンの宮崎さん
畑の状況や、どうすれば健康に生育するかを詳しく説明してくれた。
生産者の顔が見える農業を
推し進める方たちとの出会い

「どちらのクッキーが美味しいですか?」

小麦の味がダイレクトに出るクッキーなどのシンプルなお菓子の開。担当している高橋パティシエは悩んでいた。

普段使っている小麦粉も比較的こだわりのあるものではあったが、何かしっくりこないと暗礁に乗りかけていたのだ。そんな時に出会ったのが、北海道十勝産の小麦を石臼製法で製粉した全粒粉タイプの「臼夢」だった。

「小麦本来の味が引き立っていて、封を開けたときから違いがわかりました。」

何度かの試作を経て、スタッフたちの試食の結果、選ばれたのはやはりこの臼夢であった。

「石臼で挽くので、抹茶と同じで低温で粉にできる。
そのため粉の変質が進まないので香りが残るんです。」

この臼夢を届けてくれているのが、十勝で生産者の顔が見える契約栽培を続けているアグリシステムさんだ。

ここのこだわりは、契約している農家さんの畑をフィールドマンと呼ばれる専任のスタッフが毎日巡回し、それぞれの畑に最適な栽培方法を提案しているというのだ。今回お世話になったのも、そのフィールドマンの一人、宮崎さんだ。

十勝にはなんといっても
農作物栽培に最適の風土が揃っている。

なぜ十勝地方は農作物栽培でこれほどまでに有名なのか? それは飛行機から見たら一目瞭然だ。圧倒的に広大な平野が広がり、そこには見渡す限りの綺麗に配置された大規模農地が広がっているのだ。

広さだけではない、昼夜の寒暖の差が大きいため、糖度や風味を向上させ、日照時間も長い為、生育には最適な環境が整っているのだ。

ここでは小豆や大豆・小麦以外にビートやじゃがいも・とうもろこしまで、たくさんの品種が栽培されているのだが、実は小豆で最も作付けされている品種「エリモショウズ」は8年に1度しか植えることができないそうだ。そのため、毎年輪作といって、植える作物は替えなければならないのだ。

広大な畑と輪作体系が確立している為に成せるということである。

顔が見えると、安心して使える。
そして農の現場が、ますます知りたくなる。

アグリスシテムとの出会いによって、これまでの小麦や大豆・小豆との関わりがより深化できるようになった。

高橋は云う、「これまで当たり前に使ってきた材料たちが、もっともっと長い旅を経て、私たちの手元に来てくれたということが、改めてよく分かりました。そしてもっと知りたくなりました。」

常に新たな素材を求めて、ここからまた新しい1ページを始めてまいります。

農地を案内してもらう途中に、すれ違った農家の方に手を振る宮崎さんの背中は私たちには光って見えた。